久しぶりの本紹介。
最近英語の勉強で中々読書の時間がとれず読書もめっきり出来なくなってしまった。。。
ここで紹介するのは昨年読んだ本である
Alain Juppé Entre nous
です。
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これはアラン・ジュペ氏がシラク大統領の下でフランス首相をしていた1996年12月に出版された本。
フランスで彼の政治家としての人気は正直高くない印象がある。
私のフランス人パートナーに彼の評価について聞いたら「高級官僚としては頭も良く行政手腕もあったのだろうけど政治家としてはカリスマ性は全くなかった。なんかエリートの象徴・典型みたいな感じ」と言っていた。大学院のフランス人の友人に聞いても同じような事を言っていた。
ただこの本を読んでいくつか気になった点があったのでそれを記しておく。
①イメージの差について
国民が彼に対して持つインテリのイメージ、つまりパリ高等師範学校、パリ政治学院、国立行政学院を卒業したかなりのインテリで誰にも心を開かない冷酷な人、という印象と実際の彼のキャラクターとの間には相当な違いがあると書かれていた。
彼はそこでだいぶ悩んでいたのだろうことは読んでいて伝わってきた。政治家として国民と付き合っていくのにその印象はよくないですからね。
まぁこれは政治家に限らず芸能人も、また国も時代も関係ない有名人なら抱く普遍的な悩みのようです。ただ何となく「なんでこんな私を皆分かってくれないの?」という気持ちが表れすぎてるように感じた。
②EUについて
EUについて語っているページがありそこで彼はEUをヨーロッパ大陸の安定と繁栄をもたらす力、場所と書いている。EUと聞くと今でも政治の論点として国家主権との関係で必ず上がる問題だが、彼は経済的な結びつきを強調しEUの可能性を主張している。
ゴーリスト政党(右)でありながらEU統合に「賛成」をしていたシラク元大統領と同じ考えだったのがここで読み取れる。
※1992年9月にフランスで行われた「マーストリヒト条約に関する国民投票」は結果的には51%の賛成で可決されたのだが、その際ミッテラン大統領率いる社会党系に加えドゴール政党のRPRを率いていたシラクやバラデュールは賛成運動をしていた。同じ右派ではフィリップ・セガンやシャルル・パスクワは反対運動をしていた。
③政治について
政治とは人々に安心を保障するものである。
面白いなぁと思ったのは、彼の新しい民主主義、新しい市民という考えを実現するためについて書いたところで、「それは我々が必要な責任のモラルであり、権利と義務がないモラルは存在しない」という部分だ。
権利に関しては一人一人が全員の決定に参加し、行政とよりシンプルな関係を築け、司法とより公平無私な関係を構築すること。それは換言すればアイデンティティや専門教育への権利でもあると。
また義務に関しては環境を尊重し、社会的格差に対して戦うこと。具体的には学校での暴力行為や暴力に苦しむ子供を保護することなど。
そして政治家の責任としては国民や市民に「真実」を語ることであると。国民が喜ぶことだけを主張するのではなく耳をそむけたくなる事実や真実をしっかり語ることが重要。
以上、本紹介でした。
120pとすぐに読めてしまう本だが、私はジュペ氏がボルドー市長としてボルドーの街を一変させた彼の政治手法に関心があった。
なので彼の人となりや考えを少しでも知りたいと思いこの本を購入した。政治家としての国家観やある物事への捉え方を知るのにその政治家の本を読むことは重要。
彼について好き嫌いはここでは書かないが、そういった意味では面白く読めた。